ご挨拶

学術大会長のご挨拶

「第48回日本診療情報管理学会学術大会」の開催に当たり
学術大会長 堀見 忠司

学術大会長

堀見 忠司

高知県・高知市病院企業団立
高知医療センター 名誉院長
医療法人尚腎会高知高須病院
名誉院長

第48回日本診療情報管理学会学術大会(2022年)の開催に当たり、一言ご挨拶申し上げます。

この2~3年間は新型コロナウイルス(COVID-19)の猛威により、世界中の国々は、多方面にわたり多大な支障が生じました。本邦においても多数の学会の開催も中止となり、リモートによる開催が席巻し、リアルな対面学会は、残念ながら挙行出来ませんでした。今年こそは新型コロナ感染も終息し、本学会も通常の対面で挙行されることを願って、その準備を進めているところでございますが、社会情勢の変化の中、学会開催において十分なことができるか非常に不安です。幸い、四国内には、先駆者の徳島県立三好病院の住友正幸院長と愛媛労災病院の宮内文久院長がいますので、その先生方のご指導を仰ぎながら、皆と力を合わせて成功させたいと思っています。

会期は、2022年9月8日(木)~9月9日(金)の2日間、高知市内の県民文化ホールと高知会館で開催させていただきます。テーマは、「今、求められる診療情報管理の不易流行」と致しました。不易流行とは、ご存知の通り、日本人の魂である、松尾芭蕉の俳諧の理念でございます。すなわち「いつまでも変化しない伝統を踏まえつつ、本質的な不易を忘れない中に、新しく変化を重ねている流行を取り入れていくこと」で、我が国の医療だけでなく、国民の生活と社会全てのために新しい診療情報管理の“流行”が開始しました。正に、本会の今の立ち位置を表しているところでございます。また本学会のロゴマークは、四国4県と太平洋に浮かぶ達磨夕日を模しています。高知の広大な太平洋に浮かぶ美しい、だるま夕日を一度見たら、寿命が特別に延びると言われるこの景色から、高齢社会の中で、皆さんが元気に過ごされることを祈念して作成させていただきました。

本学会の学術大会の高知県での開催は、第29回(2003年;平成15年9月)に開催されて以来、19年ぶりとなります。当時を振り返れば、日本の社会情勢や医療の変化には隔世の感があります。この度の本学会の開催は、四国新幹線の設立を願望している四国の高知の開催です。その四国には、八十八か所の遍路道や瀬戸内海の美しい島々と西日本一高い石鎚山や剣山などの四国山脈の美しい山々に包まれ、徳島県には平家の落人による祖谷のかずら橋があり、また香川県には特別名勝の栗林公園、さらに愛媛県にはゆっくり汗を流せられる有名な道後温泉等々があります。そして高知県には、日本有数の水質と透明度を誇る仁淀川や四万十川があり、天を衝く高知城のお膝元には特産品や郷土料理のご馳走や美酒が、毎日休みなく提供されるひろめ市場があり、また毎日曜日には江戸時代から伝わる全長約1㎞の市内大通りで朝から夕方まで日曜市が開かれています。この素晴らしい環境で、『今、求められる診療情報管理の不易流行』を一緒に学び、これからの日本医療に大きく貢献する最高の診療情報管理を、この日、ここで習得し、その暁には、お遍路さんも歩いた八十八か所の四国をゆっくり堪能しましょう!

日本診療情報管理学会は、1975年に「診療情報管理士」を主たる会員として発足しました。本学会は、診療情報管理の発展を牽引し、診療情報学の確立に取り組む学会です。そして「診療情報管理士」とは、医療機関における患者さんの診療情報など、人の健康に関する情報を国際統計分類等に基づいて収集・管理、データベースを抽出・加工・分析し、様々なニーズに適した情報を提供する専門職種です。診療情報管理士認定者は、2020年6月1日時点では40,418名となり、関係者の意識高揚がうかがえます。またその構成は、医師、看護師、薬剤師、医療関係の事務やその他の職種など多数の職種からなり、今回の本学会に多数の参加者が期待されます。また我が国は21世紀に入り、社会は様々に変化し、特に少子高齢化社会が顕著になり、人々の生活や医療を取り巻く環境が大きく変わりました。このような社会の情勢の中で、医療・福祉・保健に関する患者さんのQOLあるいは看取りまでを視野に入れた診療情報の重要性は以前に増してアップしております。

また一方、WHO「世界保健機関」の3つの国際統計分類すなわちICD(国際疾病分類)、ICF(国際生活機能分類)、そしてICHI(保健・医療関連行為分類)が、進化しています。その中のICDは、約30年ぶりの改訂となった第11版「ICD-11」が2019年5月にWHOの年次総会で承認され、ウェブサイトで公表されました。ICD-11の特徴は、①改訂内容には、最新の医学的知見が反映されており、多くの日本の医学の専門家・団体が貢献しています。②死亡・疾病統計の国際比較に加え、臨床現場や研究など様々な場面での使用を想定し、より多様な病態を表現できるようコード体系が整備されました。また③ウェブサイトでの分類の提供など、電子的環境での活用を想定した様々なツールが、WHOから提供されていました。またICFは、2001年5月にWHOによって採択されたすべての人間の生活機能を分類する医療基準です。人間が生活するために使っている機能やその背景を、「健康状態」「心身機能・構造」「活動」「参加」「環境因子」「個人因子」の要素に分類して明らかにし、より質の高い介護にも利用できるように、「“生きることの全体像”(生活機能モデル)を示すICFという「共通言語」となり、活用される分野としては、保険や社会保障、労働、教育、経済などで活用され、個人の生活機能向上を図るためのサービスのほか、社会的参加促進や社会的支援などのシステム構築にも役立てられています。そしてICHIは、他のICDやICFに遅れ、2007年から保健・医療関連行為に関する国際分類の開発がスタートしていました。この度、日本診療情報管理学会の多くの会員が中心に取り組んだ、ICHIのWHOの承認に向かって作成された研究成果として、我が国のICHI のTEXTが出版されました。近い内にWHO総会で採択され、世界各国の保健情報や行政の基礎となるものと期待されます。その時には、本書の情報が、日本語版ICHIの重要な礎となることでしょう。これがWHOで承認されると、国際統計報告や診療報酬体系に影響を及ぼす可能性があります。

一方、我が国では、2021年(令和3年)9月1日にデジタル庁が発足されました。デジタル庁では、国民向けサービスの実現やデジタル社会を支えるシステムの共通機能の整備や普及、データ戦略など情報銀行において、特に健康・医療分野においてデータベースが整備され、新たな治療法の開発や個別化医療に向けた取り組みが進められようとしています。

このように第48回日本診療情報管理学会学術大会においては、診療情報管理の医療現場における必要性と重要性、そして診療情報管理の国際的な分類の変化と発展、さらに我が国の診療情報管理とデジタル庁との関係などについて、特別講演、教育講演、基調講演が開催され、シンポジウム、生涯教育研修会、一般演題、ランチョンセミナーなどを企画し、診療情報管理学が俯瞰する内容を予定致しています。そして本学会にご参加いただきます皆様と共に、診療情報管理の新たな展開が解き明かされていくことを期待して、ご挨拶とさせていただきます。

副学術大会長のご挨拶

第48回日本診療情報管理学会学術大会 副大会長を拝命して
副大会長 小野憲昭

副大会長

小野 憲昭

高知県・高知市病院企業団立
高知医療センター 病院長

このたび、第48回日本診療情報管理学会学術大会の、副大会長を拝命いたしました、高知医療センター病院長の小野憲昭です。ひとこと、ご挨拶申し上げます。

今大会の会長は、高知医療センター名誉院長の堀見忠司先生です。堀見会長のもと、高知高須病院診療情報課の寺尾尚一郎実行委員長を中心とする実行委員には、日本診療情報管理学会理事を務められております愛媛労災病院長 宮内文久先生、同じく理事を務めておられます徳島県立三好病院長住友正幸先生に加え、高知県内の診療情報管理士のメンバーにお願いし、今学術大会が成功いたしますよう、鋭意準備を進めております。

学会のタイトルは「今、求められる診療情報管理の不易流行」です。大会長がこのテーマに沿い学会に寄せる熱い思いを講演されるものと思います。また私自身、昨春当院病院長を拝命した際、院内全職員に、「いつまでも変化しない本質的なものを忘れない中に新しい変化を重ねているものをも取り入れていく『不易流行』の精神を持って業務を実践する」ように勧めてまいりました。日本診療情報管理学会員の皆様にも、このテーマ、精神が重要な時代であることをご理解いただけるものと思います。学術大会では、さまざまな講演、企画、シンポジウムを予定いたしますので、プログラム内容が診療情報の分野で、必ずや診療情報管理に役立つものになると思います。ご期待ください。

学会の方式は、今学会開催時期には新型コロナ感染症の収束が見えてくるものと現時点では判断しますので、現地集合、対面形式での学会開催を予定しております。(状況により、WEB形式、オンデマンド形式などの方法を追加考慮する可能性はございますが、)できる限り皆さまに四国高知の地を訪れていただき、直接ディスカッションを交わす、交流する学会が開催できますよう、努力してまいります。

多くの方々が一同に会し、本学術大会に参加いただけますことを、学会関係者一同お待ちいたしております。

よろしくお願い申し上げます。